中国の海賊版コミックをレビュー その2
毎度のことながらお久しぶりです。最初の記事より早2年とちょっと、ここで再び中国の海賊版単行本を取り上げてみましょう。
香港を除く中国における最初のドラゴンボールは1989年に春秋出版社より発行された「小猴王」で、猴とは猿、つまり「小猿王」という訳になります。私は中国語に疎いのでその小猿王という名前が何を意味するのか分かりませんが、ネットで検索する限りでは本家西遊記の孫悟空のキャラクターがヒットしたりするので、どうやら孫悟空に関係する名前のようです。この「小猴王」は4巻か5巻ほどまで出たところで終了してしまい、その後「霹雳小猴王」の名で学苑出版社から9冊出たもののまたそこで終了したようです。
小猴王

何とも酷い表紙の霹雳小猴王
そして翌1990年に中国華僑出版社より出版された海賊版の海賊版とでもいうような「日本小猴王」が今回取り上げる本になります。特にナンバリングもなくそれぞれサブタイトルが付いており、確認しうる限り全部で6冊出版されています。
実際に手に入れることができた「比武大会」(天下一武道会)の巻

表紙は何とも殺風景ですが、背景が宇宙になっているのは韓国の単行本でもよく見受けられるデザインで、おそらくは単に描くのが簡単だからでしょう。
韓国の単行本(公式版)



キャラクター名は以前紹介いたしました海南撮影美術出版社のものと大きく異なり、クリリンは小林さんではなく「苦力林」と妥当(?)な当て字になっています。ウーロンが「烏龍八戒」と西遊記を強く意識した名前になっていて、悟空の名前は本の題名と違って普通に孫悟空のままです。
製本が杜撰なので上手くスキャンできませんでした

内容は普通に右から左のままで、台詞も縦書きです。しかし内容は下品な表現に多少の修正が加えられていて、例えばバクテリアンが放屁するコマはキャラごと消されてしまってます。いくら海賊版でも表現上の規制は守らなければならなかったのでしょうか。興味深い点です。


本来の日本版

こんな具合にしばらくは本来のストーリーそのままの内容が続きましたが、この「日本小猴王」シリーズは何を思ったのか「大战迷魂宫」の巻から突然オリジナルの内容に突入してしまいます。
「大战迷魂宫」の巻(現在未入手)

「オリジナルの内容」とは読んで字の如く中国で勝手に作られたと思しきオリジナルストーリーで、今で言うところのAFみたいなものです。DBコレクターとして有名な北京ダック氏にお伺いしたところ、1990年辺りの中国では勝手に作った日本の漫画のクロスオーバーものが流行していたらしく、これもその類でしょう。効果音が日本語で書かれていますが、日本で作られたものであることを偽らなければ売れないでしょうから見よう見真似で書いていると思われます。他にも中国製のドラゴンボールのオリジナルストーリーはいくつか存在が確認されており、どれも日本語の擬音が描かれていました。

わざわざ日本語で書いた擬音に中国語を被せている模様

叫んでいるのに「し~~ん」と書いてあったり

なかなか画力は高い


こちらはもしかしたら日本製の同人漫画が元である可能性もありますが、擬音が所々不自然だったりしますし、上で述べた通り他にも現地製の勝手な番外編・続編は存在しますので高確率で中国製でしょう。この巻は残念ながら未だに手に入っていませんので、今後手に入り次第特集したいと思います。しかし物語も序盤の方でいきなりオリジナルストーリーに突入してしまうのもよく分かりませんが、日本小猴王がこの後続いていない辺りからして、先に発売した小猴王シリーズの出版社と何らかのトラブルになった可能性もあります。いずれにしても当時発売されたドラゴンボールの本は全て海賊版なんですけどね・・・。
ちなみにこの日本小猴王の後に発行され、ブウ編の終わりまで続き中国でのドラゴンボール人気の礎を築いたのが以前の記事で紹介いたしました海南撮影美術出版社の「七龙珠」(七龍珠)シリーズです。そちらも当然海賊版で、その人気を無視できなくなった集英社が公式に現地の出版社と契約を結んで単行本を発売したのが実に2000年代も半ばになった頃らしいですから、中国におけるドラゴンボールの漫画はおよそ15年ほど無法地帯であったことになります。
海南版

海南版の更にコピーの海賊版もありふれていたとか


そんなやりたい放題の中国市場は海外版ドラゴンボールを調べている身としてかえって大変興味深いですので、今後も90年代に発行された海賊版について探求していきたいです。発展していく中国においてこういった過去の汚点ともいえる歴史は遠からず葬られるでしょうし、収集することは様々な面で意義深いのではないかと思います。何か情報をお持ちの方はコメント等でご一報いただけると嬉しいです。
香港を除く中国における最初のドラゴンボールは1989年に春秋出版社より発行された「小猴王」で、猴とは猿、つまり「小猿王」という訳になります。私は中国語に疎いのでその小猿王という名前が何を意味するのか分かりませんが、ネットで検索する限りでは本家西遊記の孫悟空のキャラクターがヒットしたりするので、どうやら孫悟空に関係する名前のようです。この「小猴王」は4巻か5巻ほどまで出たところで終了してしまい、その後「霹雳小猴王」の名で学苑出版社から9冊出たもののまたそこで終了したようです。
小猴王

何とも酷い表紙の霹雳小猴王

そして翌1990年に中国華僑出版社より出版された海賊版の海賊版とでもいうような「日本小猴王」が今回取り上げる本になります。特にナンバリングもなくそれぞれサブタイトルが付いており、確認しうる限り全部で6冊出版されています。
実際に手に入れることができた「比武大会」(天下一武道会)の巻


表紙は何とも殺風景ですが、背景が宇宙になっているのは韓国の単行本でもよく見受けられるデザインで、おそらくは単に描くのが簡単だからでしょう。
韓国の単行本(公式版)



キャラクター名は以前紹介いたしました海南撮影美術出版社のものと大きく異なり、クリリンは小林さんではなく「苦力林」と妥当(?)な当て字になっています。ウーロンが「烏龍八戒」と西遊記を強く意識した名前になっていて、悟空の名前は本の題名と違って普通に孫悟空のままです。
製本が杜撰なので上手くスキャンできませんでした

内容は普通に右から左のままで、台詞も縦書きです。しかし内容は下品な表現に多少の修正が加えられていて、例えばバクテリアンが放屁するコマはキャラごと消されてしまってます。いくら海賊版でも表現上の規制は守らなければならなかったのでしょうか。興味深い点です。


本来の日本版

こんな具合にしばらくは本来のストーリーそのままの内容が続きましたが、この「日本小猴王」シリーズは何を思ったのか「大战迷魂宫」の巻から突然オリジナルの内容に突入してしまいます。
「大战迷魂宫」の巻(現在未入手)

「オリジナルの内容」とは読んで字の如く中国で勝手に作られたと思しきオリジナルストーリーで、今で言うところのAFみたいなものです。DBコレクターとして有名な北京ダック氏にお伺いしたところ、1990年辺りの中国では勝手に作った日本の漫画のクロスオーバーものが流行していたらしく、これもその類でしょう。効果音が日本語で書かれていますが、日本で作られたものであることを偽らなければ売れないでしょうから見よう見真似で書いていると思われます。他にも中国製のドラゴンボールのオリジナルストーリーはいくつか存在が確認されており、どれも日本語の擬音が描かれていました。

わざわざ日本語で書いた擬音に中国語を被せている模様

叫んでいるのに「し~~ん」と書いてあったり

なかなか画力は高い


こちらはもしかしたら日本製の同人漫画が元である可能性もありますが、擬音が所々不自然だったりしますし、上で述べた通り他にも現地製の勝手な番外編・続編は存在しますので高確率で中国製でしょう。この巻は残念ながら未だに手に入っていませんので、今後手に入り次第特集したいと思います。しかし物語も序盤の方でいきなりオリジナルストーリーに突入してしまうのもよく分かりませんが、日本小猴王がこの後続いていない辺りからして、先に発売した小猴王シリーズの出版社と何らかのトラブルになった可能性もあります。いずれにしても当時発売されたドラゴンボールの本は全て海賊版なんですけどね・・・。
ちなみにこの日本小猴王の後に発行され、ブウ編の終わりまで続き中国でのドラゴンボール人気の礎を築いたのが以前の記事で紹介いたしました海南撮影美術出版社の「七龙珠」(七龍珠)シリーズです。そちらも当然海賊版で、その人気を無視できなくなった集英社が公式に現地の出版社と契約を結んで単行本を発売したのが実に2000年代も半ばになった頃らしいですから、中国におけるドラゴンボールの漫画はおよそ15年ほど無法地帯であったことになります。
海南版

海南版の更にコピーの海賊版もありふれていたとか


そんなやりたい放題の中国市場は海外版ドラゴンボールを調べている身としてかえって大変興味深いですので、今後も90年代に発行された海賊版について探求していきたいです。発展していく中国においてこういった過去の汚点ともいえる歴史は遠からず葬られるでしょうし、収集することは様々な面で意義深いのではないかと思います。何か情報をお持ちの方はコメント等でご一報いただけると嬉しいです。
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